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  SDGsについて
      (2023年1月14日更新)        藤原 敬明
「SDGsは必要なの」
1. SDGs(エスディージーズ)は持続可能な開発目標への取り組み
 2015年9月、ニューヨーク国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、193の加盟国によって「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択されました。 SDGsはこの2030アジェンダに記載された持続可能な目標です。アジェンダとはプラン・計画という意味で、実行に移されるべき事柄の意味合いがあります。
 SDGsは、Sustainable Development Goalsという英語の頭文字を取った略称です。 2016年〜2030年の15年間で達成するために掲げた目標である17の目標(ゴール)と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されていて、地球上の誰一人として取り残さないことを誓っています。 17の目標には、「こういうふうに行動し、こんな状態になりたい」という内容が書かれています。
2.SDGsの特徴
 SDGsはかつて行われていた社会貢献活動やメセナ(文化貢献活動)とは少し異なります。これらは本業との結び付きが弱く、社会に対する償いの面がありました。 しかし、SDGsの取り組みは本業を通じての社会貢献の面が強く、企業理念のミッションと社会課題の解決の両立を目標としています。 サステナビリティを重視しており、本業の強化に結び付けることが可能になっています。
3.個々の企業がSDGsを作成するとは?
 SDGsは17の独立したゴールではありません。17の項目それぞれが互いに関係しあうゴールを示した普遍的なアジェンダです。 1社だけでSDGsを達成することはできません。社会や経済の仕組みを根底から変えられるよう、さまざまなパートナーと協働しています。  経営資源が多く、事業範囲の広い大企業の場合、17の目標を達成するSDGsを作成している企業もあります。 大企業の場合は良いのですが、社内資源の限られる中小企業の場合は総花的なSDGsとなり、企業の活動を表現し切れていないことがあります。  中小企業がSDGsを作成する時は、17の目標を必ずしも全て達成する計画を作成する必要はありません。 自社が少し頑張れば達成できる目標を17の目標の中から3〜5個の目標を選び出し作成します。 多くの企業がSDGsの計画を作成し取り組ことによって、全体としてSDGsの17の目標に取り組むことができます。

SDGsのメリット1
 ミレニアル世代やZ世代など若い人は誰かのために役に立っていることとともにサステナビリティへの関心が非常に高くなっています。 企業はSDGsに本気で取り組むことによって社員の採用がより容易になります。 また、消費者としても社会課題に取り組んでいる企業として好感度を持ち、商品やサービスを販売しやすくなり、事業活動を継続しやすくなります。

SDGsのメリット2
 経営学者のピーター・ドラッガー氏の創作と言われている3人の石工の話があります。旅人が3人の石工に何をしているかを尋ねました。1人目は生計を立てている、2人目は世界一の石工の仕事をしている、3人目は教会を建てていると答えました。このことは社員の中でもみられ、大雑把に1/3ずつ分けられます。ドラッガーは視野を広く持った3人目の石工を推奨しています。 3人の石工の考え方は企業においても同様に見られます。1人目や2人目の石工の考えでは、企業をとりまく環境変化の激しい現在において変化に適応するのが難しくなります。 SDGsは3人目の石工の考え方に近づけて視野を広くしてくれ、変化に対応しやすくなります。

SDGsのメリット3
 SDGsの17の目標と169のターゲットの枠組みの中で世界中の企業が戦略を考えるため、容易に世界中の企業の戦略を理解することができます。 17の目標に対してそれぞれアイコンがあり、それぞれのアイコンには数字が振られており、例え外国語で書かれていてもアイコンを見れば戦略を理解することができます。 SDGsを作成することはグローバル化の一歩となります。
4.SDGs作成の方法
 1つ目の方法は社是や経営理念から作り上げる方法です。別の軸から見直すことによって社是や経営理念の内容がより明確になることもあります。 老舗企業であれば創業の精神から、若い企業でも経営理念やミッション・ビジョンといった言葉で、「我々が集まってこの事業を一緒にやる意義や目的」を共有しています。 なお、社是は一般的に下記の3つから構成されます。
 @ 事業領域(ドメイン)
 A 自社の存在意義(パーパス)
 B 社員の行動規範
  企業が伝えたいメッセージをまとめたり、経営者の考えていることを言語化したりする。視野を広く持って、考えられていない部分に思いを馳せてもらう。 その思考の過程をそのまま言葉にしていくのです。特に、自社の存在意義(パーパス)と社会問題の解決を両立させることが重要となります。
 2つ目の方法が経営計画(中期)の時に、SDGsの17の目標に対し、当社として何ができるかを分析し、計画を立てていく方法です。 経営理念や経営目的の実現のために、毎年利益を上げて存続していくのが企業です。 目的を実現するためには、具体的な目標を決めて、主に経営者と従業員の間で共有し、日々の活動に落とし込んでいくことになります。
5.TCFDについて
 パリ協定を契機に、企業が気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)や脱炭素に向けた目標設定(SBT、RE100)などを通じ、脱炭素経営に取り組む動きが進展しています。 このような企業の取組は国際的なESG投資の潮流の中で企業価値の向上につながることが期待できます。 他社に先んじて脱炭素経営の取組を進めることにより差別化を図ることができ、新たな取引先やビジネスチャンスの獲得に結びつくことが期待できます。
 パリ協定は2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです。 パリ協定は2015年にパリで開かれ、温室効果ガス削減に関する国際的取り決めを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意されました。 パリ協定では次のような世界共通の長期目標を掲げています。
  ・世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
  ・そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
 現在の予測では世界の平均気温は今世紀末までに4度上昇すると言われている。

 TCFDは企業の気候変動への取組、影響に関する情報を開示する枠組みです。 TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。 TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する項目について開示することを推奨している。
 SBT(Science Based Targets)はパリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する科学的な温室効果ガス排出削減目標設定を促す枠組みである。 4.2%/年以上の削減(産業革命以後の温暖化を1.5℃に対応)を目安として、5年?10年先の目標を設定する。 SBTが削減対象とする排出量は事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量(サプライチェーン排出量)の削減がSBTでは求められている。
 RE100とは「Renewable Energy 100%」の略称で、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブである。 RE100設立の意図は電力需要側が再生可能エネルギーの必要性を政府や関係機関に訴え掛ける。 それにより政府や関係機関がそれに沿った関係法令を作り出し、電力を供給する電力会社や小売電気事業者に再生可能エネルギーの開発を促す。 その結果より多くの再生可能エネルギーを生み出し、脱炭素社会への好循環を生み出すことを目的にしている。

6.各産業に対する脱炭素の方法
【製鉄】
 従来のコークス(石炭)を使った製鉄法から「水素製鉄」と呼ばれる製造法に代わり、脱炭素の将来的な切り札とされています。 原価は従来品より3割程度高いと言われるがサプライチェーン(供給網)全体でのCO2排出を抑える効果があるらしい。 日本でも日本製鉄とJFEスチールは「水素製鉄」の実用化で連携しています。高炉より二酸化炭素(CO2)排出量を50%以上減らせます。 水素は水の電気分解で作られることが多く、日本の場合には電気は火力発電で作られているため、現在ではCO2削減にはつながらない状況にあります。 そのため水力発電で電気のほとんどを賄っているスウェーデン等が先行しています。 現在、水素の供給メドが立っていないため、製鉄各社は大型電気炉に力を入れています。 これは日本における鉄スクラップの量が多いために可能になった方法とも言えます。 なお、太陽光発電では出力制限が行われている(電力は余っている)が、水素供給には結びついていません。 水素の取り扱いの難しさがあるようです。

【自動車】
 従来の自動車会社の中核技術はボディ製作技術とエンジン技術と言われています。 電気自動車(EV)になるとボディ製作技術のみとなり、採算が厳しくなると推測されています。 そのボディ製作技術もギガキャスト等の技術が実用化されています。 現在は自動車会社は円安効果による為替差益によって多大な利益を出しています。 自動車会社は現在の利益だけでなく、将来の環境投資に多大な投資ができるかが重要になっています。

 トヨタ自動車はEVやハイブリット車等に多目的に使えるプラットホーム(車台)の開発を進めていましたが、EV専用車台の開発に切り替えました。 EV専用車台でのEV車が開発されてから本格的な普及が始まるとみられます。 そのEV専用車台の概要かギガキャストとして発表されました。 フロントボディとリアボディの鋼板等の部品86点を大型のアルミ鋳造品に集約したものです。 車台は前部、中央、後部に分けられて組み立てられることが多いがですが、EV専用台車では3つのパーツの括りが変更なると考えられます。 なお日本の運輸部門のCO2の排出量は18%を占め、自家用車はその内の46%を排出しています。
 EVに搭載されているリチウムイオン電池においては巨額投資を続ける中韓勢が市場を席巻し、シェアを奪われた日本の電池産業は窮地に陥っています。 日本が基礎研究で先行する次世代電池「全固体電池」の実用化による巻き返しを図っています。 現在のリチウムイオン電池は液体の電解質の中に正極と負極が浸っている状態です。この電解質を固体に置き換えます。 固体の特性として対応できる温度範囲も広がり安全性も高まります。 トヨタ自動車と出光は全個体電池で提携しました。

 2023年3月にEUは2035年以降の内燃機関(エンジン)車の新車販売をすべて禁じる方針を撤回しました。 その場合には温暖化ガス排出をゼロとみなす合成燃料(e-フューエル)を利用する場合に限り販売を認める条件が付いています。 合成燃料は二酸化炭素(CO2)とグリーン水素を原料とするため、燃焼で出るCO2の大部分を相殺できるためです。
 なお、合成燃料は電気を使って水素を生産し、電気で水素とCO2を合成して生成するため電気を直接使用する電気自動車の方が効率が高くなります。 エンジン車を残す理由は燃料費は少し高くなりますが、運転することの楽しさを残すためです。 電気自動車は新しい楽しみの提供が課題となっています。

 ボルボカーは2030年までに販売する全ての新車をEVにすることを発表しています。  メルセデス・ベンツも条件付きながらも2030年までに新車販売を全てEVに置き換える計画を発表しました。 BMWは2030年までに世界販売の50%をEVにすることを計画しています。水素燃料電池はEVを補完する役割があると考えています。 BMWは燃料電池技術でトヨタと提携している。 欧州高級車ブランドは概ね2030年までに販売する全車をEVにする方針を持っています。
 ドヨタ自動車は2030年に350万台のEVを販売する目標を揚げています。 レクサスは2035年に全世界販売をEVにすると発表しました。 ホンダは2040年に新車販売を全てEVと燃料電池車にすると発表しています。
 日産自動車はエンジンで発電しモーターで走るシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」が中心です。 最近可変圧縮比エンジンを発表した。圧縮比を14:1から8:1に無段階に変更できるそうです。
 三菱自働車はEV化の進んだ中国市場から生産・販売から撤退し、EVは日産とルノーの合弁会社に出資しEVの供給を受けて販売する計画です。

 EVトラックは活用地域が広くなれば重い電池を多く搭載するため車両重量が重くなり、重くなった分積載量が減り、価格が高くなります。 車両価格が高くなった分、販売台数は減り、量産による価格低下が望めなく経済合理性が低くなっています。 郵便局では比較的狭い地域で運用している車両の一部に軽商用車ベースEVを活用しています。 ほぼ決まったルートを走行し、重量物を運ぶことが少なく、比較的少量の電池を搭載し、車両価格は著しい高価にならず、一定数普及しています。

 事業再構築補助金の公募要領でもガソリン車向け部品から電気自動車等向け部品製造への事業転換を例に取り上げています。 重量物のリチウム電池を搭載するため車体重量も増加し、そのためのボディや足回り部品の強化が必要になります。     発生する音は小さくなりますが、新しい価値創造のために高音域の遮音・防音が必要になってくると思われます。

 なお、EV車を使うには普通充電器が必要になり、20万円程度の費用が掛かります。 そのために電力会社との電気契約のアンペア数の見直しが必要になることがあります。 高速充電器は200万円程度の費用が掛かります。
 岡山県のEV普通充電器の補助の条件は、充電設備の利用者を限定せず、利用にあたり他のサービスの利用又は物品の購入を条件としない(駐車料金の徴収可)ことになっています。 普通充電器の補助率1/2で上限金額18万円です。高速充電器は補助率1/2で上限金額150万円です。 超高速充電器はディラーを中心に整備されているように見受けられます。 単純にガソリンスタンドが充電スタンドに業態変更する訳ではないようです。

【航空機】
 世界全体で見ると、2019年に航空機が排出したしたCO2の量は10億トンを超えています。 これは人間に由来するCO2排出量全体の2%を超え、船舶や鉄道からの排出量を上回る規模です。 これまで航空業界は使用燃料の削減という観点からCO2削減に取り組んでいます。 航空機は4基のジェットエンジンを持つジャンボジェット機等は燃費効率が悪く、2基のエンジンを持つ機体に置き換わっています。 今後更にCO2を削減するために欧米を中心とした世界各国でSAF(Sustainable Aviation Fuel)の開発や実用化が進められていて、2030年以降の本格的な普及が予想されています。 現在の世界のSAF生産量は需要の0.03%未満に留まっており、2030年には使用燃料の10%にSAFを使用する目標を立てています。
    日本製紙は住友商事などと提携し、国産木材を使って持続可能な航空燃料「SAF」の原料になるバイオエタノールを生産する。 投資額は最大数百億円の見込みで、2027年に製造を始める。欧州ではSAFの使用量を50年に85%まで引き上げる計画です。

【鉄道】
 JR西日本では電化されていない路線については燃料電池使った機関車に置き換えることを発表しました。 発車時や坂道ではパワーが不足するため電池を併用するとのことです。 なお、電化された路線で停電事故等に備えた保全車両が必要になり、それら車両は合成燃料を使用するか燃料電池車になるか不明です。

【船舶】
 船舶が排出するCO2は2.1%を占めていると分析されています。 船舶にはそのものを動かすための燃料とカーボンニュートラルのための水素やアンモニアを運ぶ船を生産する目標があります。
 燃料としてはLPG(CO2排出量を減らす)、メタノール、アンモニア、水素があります。 LPGはLPG輸送船では既に使用されています。 船舶は航行場所により低公害燃料の使用が義務化されている区域があります。この区域を航行する時のみにLPGを使用する船もあるようです。 メタノールとアンモニアは人体に有害な物質であり、管理が十分に行る大型船舶で使うことになると思います。 メタノール、アンモニア、水素は生産方法によってCO2排出量が変わってきます。

 現在液化水素運搬船の開発が行われています。それには真空断熱タンクという工法が使われている。 アンモニアについては冷媒として使用されていることもあり、貯蔵タンクの技術は既にあると推定されます。

【プラスチック】
 日本では原油を精製して得られるナフサから石油化学製品を作ります。 一般社団法人プラスチック循環利用協会によれば、プラスチック生産に使われる原油は、わずか3%(2018年)です。
 カーボンニュートラルのためには、まずバイオ資源を使ったバイオプラスチックに置き換える方法があります。 バイオプラスチックは食料生産と競合しない方針が立てられています。 例えばバイオポリエチレンの多くはサトウキビの搾りかす(バガス)を原材料にしてエタノールを生産します。 そのエタノールに濃硫酸を加えて約170℃で加熱し脱水反応によってエチレンを生成し、そのエチレンを重合してポリエチレンが合成されます。
 e-フューエルとも関連しますが、二酸化炭素と水素を合成してエタノールを生成することが重要な技術になっているように見受けられます。 その重要な技術の課題は触媒の開発にあり、まだ大学等の研究機関で行う基礎研究の段階にあります。 二酸化炭素と水素からエタノールが合成できれば、ガソリンにエタノールを混ぜてE10の燃料として使用することができます。 また、エタノールから合成ゴムの原料のブタジエンを合成する技術開発も行われています。 同様に二酸化炭素と水素からメタノールを合成することもできます。 メタノールは人体に有害な物質であり、船舶等の管理が厳重に行える所での使用に限定されると考えられます。

 そしてプラスチックを他の素材に置き替えることも行われています。 菓子類に使用されていたプラスチックフィルムの一部が紙に置き換わっています。 プロピレン製等のストローの一部は紙製に置き換わっています。 また、窓付き封筒の窓の部分にはプラスチックフィルムが使用されていましたが、トレース紙に代わった封筒が増えています。 セルロースナノファイバーで透明な紙ができ、コストが下がれば商品パッケージ等の使用が増えると期待されます。

 2017年末に中国が生活由来の廃プラスチックの輸入を禁止して、世界中に廃プラスチックが溢れました。 その結果、日本では廃プラスチックのサーマルリサイクルは増加したけれどもマテリアルリサイクルは増えていません。 マテリアルリサイクルが増えない原因は下記が考えられます。
 @ プラスチックの組成材料比が異なるため想定される物理特性が得られない。
 A 添加物としてハロゲンが含まれ、焼却すると有毒ガスが発生する。
 B プラスチックの添加剤に金属類等が含まれていて溶け出す可能性がある。
 C 再生する時に不純物の除去ができない。

【ハウスメーカー】
 住宅需要は少子化の影響を受けて長期的に減り続けています。 このような状況においても地球温暖化対策として省エネ効果の高い高断熱の住宅が求められています。
・エネルギーを効率的に使った省エネルギーを実現させるスマートハウス
・安全性や利便性を高め、効率的で快適なライフスタイルの実現を目指すスマートホーム
 スマートハウスは断熱材で住宅全体を覆うだけでなく、住宅の中に太陽光を取り入れたり、熱循環を工夫したりして住宅全体の設計が変わってきています。 ZEH(ゼッチ:Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス))は快適な室内環境を保ちながら、 住宅の高断熱化(主に壁や窓)と高効率設備(主に空調、換気、給湯、照明)により、住宅におけるエネルギー消費量を省エネルギー基準から2割以上削減を目指します。 これに加え再生可能エネルギー(主に太陽光パネル)を導入することで年間の収支がゼロとすることを目指した住宅です。
 2020年のハウスメーカーが新築する注文戸建住宅において約56%がZEHとなりました。 2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画における「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」、「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」という政府目標があります。 東京都は住宅の屋根に太陽光パネルの設置の義務化を計画しています。 そして新型コロナウイルス感染症を契機に、室内で過ごす時間が増えたためより快適な住宅へのニーズも高くなっています。 また、現在モデルハウス中心の販売方法もIT技術を活用したバーチャル技術を活用したものに変化する可能性が高くなっています。
 東京電力は給湯器の「エコキュート」を昼間稼働(沸き上げ)に変更し、夜間電力から昼間の太陽光パネルによる昼間電力使用に切り替えることに舵を切りました。 このことは原子力発電がほとんど停止し夜間電力の余剰が少なくなり、天気が良いと太陽光パネルによる発電が増えている電力時給調整によるものです。

【電力産業】
 自然エネルギーを活用した電力として太陽光発電と風力発電があり、既存のものとして水力発電や地熱発電等があります。 しかし、それだけでは電力の需要みたす量の発電はできません。太陽光発電は夜間は発電できないし、風が吹かないと風力発電はできません。
 現在化石燃料を使った石油・石炭火力から水素やアンモニア発電に移行することが計画されています。 オーストラリアの砂漠地帯で太陽光発電を行い、その電力を使って水を電気分解し、生成できた水を日本に輸入しようというものです。 水素は取り扱いが難しいため、アンモニアに合成して燃料として使用しょうという話しです。

 石炭発電にアンモニアを混焼する技術は日本が進んでいます。これに対して欧米から異議が出ています。 アンモニアを混焼するよりも肥料として作物を育ててCO2の吸収がする方が効率よいとする考えであります。 次にアンモニア混焼によって石炭火力が長く存続することに異議を唱えています。

【ガス産業】
 都市ガスやLPガスは火力発電所や大気から回収したCO2に水素をメタネーション技術によって反応させたメタン(CH4)に置き換わると言われています。 現在IHIが福島県相馬市でメタネーション技術を使ったメタンでバスを走行する実証実験を行っています。 ただ水を電気分解し水素を作り、その水素と二酸化炭素を電気を使い反応させメタンを合成します。 メタン合成に多大な電気を使用し、電気を直接使用する方法とメタンを合成して使用する方法とどちらが使い勝手が良いかという問題なります。

【資源産業】
 地球温暖化対策で自然エネルギーや電気自動車の生産が増えると、銅の消費量は2035年には現在の2倍になるとの予想があります。 銅鉱石の産出量(銅含有量ベースの重量、2015年)はチリ、中国、ペルー、アメリカ合衆国、コンゴ民主共和国が上位国です。特にチリは世界の約30%を産出しています。 鉱山開発や精練所の生産能力の課題があります。
 またレアメタルの需要も増加します。レアメタルは埋蔵量が少ないか、技術やコストの面から抽出が難しい金属の総称です。 経済産業省の定義ではニッケルやコバルト、インジウム、クロムなど31鉱種が対象となっています。 産出はロシアや中国、アフリカなど特定の地域に偏在しており、供給不安や価格変動のリスクが常にあります。 世界的な電気自動車(EV)シフトで需要が高まるコバルトは、生産量の7割近くをコンゴ民主共和国が占めています。

【衣料品(ファッション産業)】
 ファーストファッションとして大量生産大量消費として環境負荷の高い産業のひとつです。 リデュース、リユース、リサイクルの中で、古着として販売することによってリユースを増やし、衣料品の廃棄を減らし、無駄な衣料品の生産を減らす(リデュース)も行われ始めています。 愛知県は羊毛織物の産地であり、反毛というリサイクル技術があります。 古着や端材を綿状に戻し、糸に加工し織物にする水平リサイクル技術です。 同じく綿状に戻して不織布に加工するリサイクルも行われています。この不織布は自動車の吸音材として利用されています。 衣料品にはリデュース、リユース、リサイクルで分類しにくいリメイクという手法があります。 古着の破損した箇所をデザインの優れた方法で修理したり、複数の衣料品を組み合わせることも行われています。 一般に行われているアップリサイクルとも異なる手法です。 また、シミのついた衣料品は黒く染め直すリユースも行われています。

以上

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