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イノベーションについて (2023年3月6日更新) 藤原 敬明 |
「イノベーションを起すには」 |
1.イノベーションとは イノベーション(innovation)とは、これまでにない新しいサービスや製品などを生み出すことです。 それに加えて生産工程や流通方法を改善することも含まれます。 オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーター(1883〜1950)がイノベーションという概念を提唱しました。 シュンペーターは、経済の発展には企業家(アントレプレナー)によるイノベーションが重要だと説いています。 イノベーションは今までにない既存のものの結合(新結合)です。
経営計画等の作成時に「将来のあるべき姿」を想定することが多く行われています。 最近、アート思考という言葉が使われています。それは既成概念にとらわれない自由な思考法のことです。 自由な発想により、より高い理想を掲げることができます。 一方、従来から使われているロジカル思考は、根拠と結論を明確にしながら、道筋を立てて将来像を論理的に思考する方法です。 ロジカル思考は「何が問題か」という視点で考え、問題の解決法の論理的な正しさ重視するため、既存の問題解決法を使ってできる範囲の「あるべき姿」となります。 アート思考は「合理的でない自由な発想で考える」方法であり、ロジカル思考は「既存の知識で合理的かつ論理的に考える」方法という違いがあります。 アート思考は新規商品等の革新的な創出(innovation)を促すことを得意とすると考えることができます。 見方を変えれば、アート思考で考えられた「将来のあるべき姿」は高い理想を実現することができ、その実現にはイノベーションを必要としています。 次に「将来のあるべき姿」からバックキャストして人材のスキルの向上や設備等のリソースの確保をします。 シュンペータの新結合をトランプの神経衰弱ゲームのように並べたカードの中から2枚選んで組み合わせると今までにない組み合わせはできます。 しかし、これでは良い結合にならないことが多くあります。 そのため新結合をうまく活用するためには人の感情に目を向けることが重要になります。 発想法のマンダラートで表すと下記のようになります。
2.イノベーションのジレンマ 「イノベーションのジレンマ」とは、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論です。 1997年にクレイトン・クリステンセン氏によって提唱された理論です。 私見になるのですが、この理論の背景には1980年代の日本の自動車メーカーのアメリカ市場での躍進があるように見受けられます。 また、トヨタ生産方式が斬新的イノベーションとして認められたことも反映したようです。 シュンペーターのイノベーションはディスラブティブ(破壊的)影響を持つものであった。 それに対してトヨタ生産方式は非ディスラブティブなイノベーションであった。 非ディスラブティブイノベーションは多くの経営資源を持つ大手企業と直接対峙することを避けられる。 大企業にとって新規の事業や技術は、利益率の低い魅力ない小さい事業に映るだけでなく、カニバリズム(競合)によって既存の事業性を損なう可能性があります。 また、既存の商品が利益率が高い等の優れた特色を持つために、その特色を改良することに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かなくなってしまいます。。 そのため、大企業は新規市場への参入が遅れる傾向にあります。 その結果、既存の商品より劣るが、新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に大きく後れを取ってしまうのである。 大企業は既存製品の改良という「持続的イノベーション」を中心に取り組んでいることがあります。 それにも係わらず改善を重ねる優良企業であっても、新しい革新的な技術を軽視してしまい、その地位を失う危険があることを指しています。 一方、新興企業は新規技術による新規事業が一定の水準に達したら「破壊的イノベーション」として既存事業に破壊的な損失を与えることがあります。 この破壊的イノベーションの例として写真フィルムの世界的な大手企業であるコダック社の例がよく引用されます。 コダック社は黄色い巨人と称される程の大企業でしたが、デジタルカメラの出現によって消滅してしまいました。 既存事業は写真フィルムであり、デジタルカメラが破壊的イノベーションの例です。 一方、日本の写真フィルム大手の富士フィルムは、要素技術である表面処理技術等を使って多角化を行って発展し続けています。 このクレイトン・クリステンセン氏の破壊的イノベーションの考えは、1980年代に多量の日本車が急速な伸び増加し、米国自動車産業に破壊的な損害を与えたことが背景にあると考えられます。 この時期オイルショックの影響でガソリン価格は高騰し、大型の米国車は燃費が悪く、小型で燃費の良い日本車が人気で販売台数を伸ばしていきました。 このような日本車ですが、米国に進出した当初は米国車と比較して性能面が見劣りし、米国車が買えない人達に販売していました。 米国車と同様に持続的イノベーションで品質の改善を繰り返していました。 転機となったのは(第二次)オイルショックによるガソリン価格の高騰と、小型車に乗ることがスマートであるという価値観の転換があった。 米国の自動車会社も小型車開発を行ったが、大型車と小型車では生産技術が異なったことと大型車の利益率が高かったことで小型車開発はうまく行きませんでした。 日本の乗用車自主輸出規制が始まり、その間に小型車製造技術を習得し、全面的な破壊的イノベーションは避けられました。 アメリカ市場で起きた同様のことが<、現在立場が逆転し電気自動車(EV)で起きようとしています。 中国がガソリン車が主の自動車市場では自国の自動車産業の育成は難しいと考え、次世代技術のEVに集中した結果生じたものでした。 日本では経済合理性考えに基づいて、化石燃料によって作られる電気を使うEVは地球温暖化に対して効果は少ないとの科学的な考えからEVに対して消極的でした。 人の持つ感情面の側面を過少評価した結果でもありました。 また、業界の垣根を超えたイノベーションも起きています。 例えば携帯電話と連動したスマートウォッチなどがあります。装飾品と考えていた腕時計業界では追従しにくい状況と考えられます。 3.経営革新計画について 都道府県が経営革新計画の作成を通して中小企業の発展を支援しています。 経営革新計画は、中小企業が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する中期的な経営計画書です。 新事業活動とは、個々の中小企業者にとって新たな事業活動であれば、既に他社において採用されている技術・方式を活用する場合についても原則として対象となります。 ただし、業種ごとに同業の中小企業における当該技術・方式等の導入状況を判断し、それぞれについて既に相当程度普及している技術・方式等の導入については対象外となります その新事業活動の内容は下記です。 1.新商品の開発又は生産 2.新役務(サービス)の開発又は生産 3.商品の新たな生産又は販売方法の導入 4.役務(サービス)の新たな提供方法の導入 経営革新計画は、「経営の相当程度の向上」を図る計画であることが必要です。 事業期間は3年間から5年間とし、付加価値額(又は1人あたりの付加価値額)の伸び率年3%以上及び給与支給総額の伸び率は年1.5%以上となっています。 つまり、事業期間が3年間の場合は3年後までの目標伸び率が付加価値額(又は1人あたりの付加価値額)は9%以上及び給与支給総額が4.5%以上であることが必要になります。 付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費 一人当たりの付加価値額 = 付加価値額 / 従業員数 給与支給総額 = 役員並びに従業員に支払う給料、賃金及び賞与 + 給与所得とされる手当 なお、経営革新計画は制度の概要は中小企業庁が決めているが、運用については都道府県で決定されています。 そのため、申請書式等は都道府県によって異なっています。 それだけでなく担当者によって新事業活動として概念が少し異なっているよに見受けられます。 |
以上 |
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